「部内で使う共有フォルダを作り直すことになり、20人ぶんの初期パスワードを用意して、紙に刷って配る」という、事務仕事でよくある場面を想定して、HANEPass を実際に操作してみました。先に結論を書くと、はじめから用意されている「紙で配る初期パスワード・10文字」をそのまま使うと、ツール自身が「総当たりでの目安:2日」と表示します。長さを12文字にするだけで、その表示は15年に変わりました。決め直すまでの手順を、画面のまま書いていきます。
やること:20人ぶんを、紙で渡せる形で用意する
条件はこう決めました。すべて架空の想定です。
- 人数は20人。1人1つ、別々のパスワードにする
- メールではなく紙に刷って手渡すので、読み間違えにくいこと
- あくまで初期パスワード。受け取った人に、あとで変えてもらう前提
自分で20個を考えるのは無理があり、考えたところで「サンプル2026」のような似たものになります。作るところは機械に任せます。
① 開いた直後の16文字を、まず読んでみる
HANEPassを開くと、押す前からパスワードが1つ出ています。初期設定は16文字で、数字・英字(小)・英字(大)・記号のすべてを使い、紛らわしい文字は使わない、という条件です。
括弧の中の「16文字 × 70種類」が、この目安の元になっている数です。1文字あたり70通りの候補から選んでいて、それが16文字ぶん、という意味になります。
② 紙で配る用の条件は、はじめから用意されていた
条件を1つずつ触る前に、パネルの上にある「よく使う設定」を開いてみました。自分で保存したものがなくても、はじめから3つ入っています。
| 英数字のみ・12文字 | 記号が使えないシステム向け |
|---|---|
| 紙で配る初期パスワード・10文字 | 読み間違え防止 |
| しっかり守る・20文字 | 記号あり |
今回はまさに2番目なので、これを選びました。選んだ瞬間に条件が全部入れ替わります。
初期設定から変わるのは、長さ・記号のチェック・「同じ文字を2回続けない」・下の「作る数」の4か所です。手で同じ状態にするなら4回触ることになるので、ここは素直に助かりました。ただし、この設定は呼び出しただけでは次回に残りません(⑥に書きます)。
③ 出てきたのは10文字。目安は「2日」だった
条件を切り替えると、上の大きい表示もその場で作り直されます。
w9fPxavF7M のように、数字と英字だけの10文字です。強さの表示は「58 ビット相当(10文字 × 56種類) 総当たりでの目安:2日」で、帯はオレンジ、評価は「ふつう」でした。記号を使わないので、1文字あたりの候補は70種類から56種類に減ります。そこへ長さも16から10へ減るので、①の16文字とは桁が違う数字になります。①が「1億世紀以上」で、こちらは2日。同じツールが同じ場所に出している数字なので、並べると落差がはっきりします。
あわせて、この目安は総当たりで試された場合の理論値で、実際の安全性を保証するものではない、ともページに明記されています。使い回しをしない、人に見える場所に貼らない、といったところは数字の外の話になります。
④ 長さだけを12文字にする
「変えてもらうまで」の間が長引くことは十分ありえます。紙に打ち込む手間はそれほど変わらないだろうと考えて、長さのつまみだけを10から12へ動かしました。ほかの条件はそのままです。
g5NPF65NVmYu の12文字です。| 長さ | 種類 | 強さの目安 | 総当たりでの目安 |
|---|---|---|---|
| 10文字 | 56種類 | 58ビット(ふつう) | 2日 |
| 12文字 | 56種類 | 70ビット(強い) | 15年 |
2文字足しただけで、目安が2日から15年になりました。文字の種類は56のまま動いていません。ページの説明にある「文字の種類を増やすより、長さを増やすほうが数値は大きくなります」を、そのまま数字で見た形です。記号を足すかどうかで悩むより、1〜2文字伸ばすほうが早い、というのが今回いちばんはっきりした点でした。今回はこの12文字で進めます。
⑤ 20件をまとめて作る
下の「まとめて作る」で、作る数を20にして押します。選べるのは5・10・20・50の4つでした。
並んだ20件を見比べて、同じものは1組もありませんでした。また、1番に入っていたのは上の大きい表示に出ていたものではなく、別のものでした。押した時点で20件を新しく作り直しているので、上のものが気に入ったからといって、それが1番になるわけではありません。
⑥ 閉じると消える。残るのは「条件」だけ
一覧をコピーしたあと、ページを開き直してみました。20件の一覧は空になり、「まとめて作る」を押す前の案内文に戻っています。さらに、②で呼び出した条件も残っておらず、長さは初期設定の16文字に戻っていました。
裏を返すと、コピーする前にタブを閉じたら、その20件は取り戻せません。もう一度押せば新しい20件は作れますが、同じものは出てきません。
できなかったこと
| 名前と組にした一覧 | 作れるのはパスワードだけの一覧です。氏名・部署・配布日といった欄を持たせることはできません。表の形にしてから配りたいときは、貼り付けた先で列を足すことになります。表計算の書類そのものを扱いたいときはHANECSVのほうの仕事です。 |
|---|---|
| ファイルとしての書き出し | 一覧はコピーだけで、ファイルとして保存するボタンはありません。これはこれで、パスワードの入ったファイルが端末に残らないという意味でもあります。 |
| 作ったパスワードの控え | ページにもサーバーにも残りません(⑥)。配ったあとで「あの人のは何だったか」を調べる、という使い方はできない前提で運用することになります。 |
| 読める形のパスワード | 「さくら3月くるま」のような、単語をつなげた覚えやすい形は作れません。作られるのは英数字(と記号)の並びだけです。 |
| 強さの保証 | 表示される「ビット相当」と「総当たりでの目安」は、総当たりで試された場合の理論値です。ページにも「実際の安全性を保証するものではありません」と明記されています。使い回しや、漏れたあとの被害までは、この数字に入っていません。 |
逆に、システム側の制限に合わせるほうは細かくできました。記号のチェックを入れると「使う記号」の入力欄が出てきて、!#$%&*+-=?@^_~ と入っている中身を自由に書き換えられます。「この記号だけは使えます」と決まっているシステムに登録するときは、そこへ許された記号だけを並べておけば、そのとおりに作られます。
データがどこにあるか
そのぶん、控えも残りません。必要なぶんはコピーしてから、自分の責任で保管することになります。プライバシーポリシーもあわせてご覧ください。
かかった時間
| やったこと | 時間 |
|---|---|
| 開いて、既定の16文字の表示を読む | 1分 |
| 紛らわしい文字の除外を外して、数字を見比べる | 1分 |
| 「よく使う設定」から紙で配る用を呼び出す | 1分 |
| 「2日」という表示を見て、長さを10から12へ決め直す | 3分 |
| 20件まとめて作って、一覧をコピーする | 1分 |
| 開き直して、何が残っているかを確かめる | 2分 |
画面の前での作業は9分ほどでした。いちばん時間を使ったのは、長さを何文字にするかを決めるところです。ここで先に「2日」と「15年」を見比べておくと、20枚刷ったあとで悩まずに済みます。
次回への申し送り
- はじめから用意された「紙で配る・10文字」は、そのままでは「2日」。呼び出したら、まず強さの帯と目安を読む。長さは自分で決め直すもの、と考えておく。
- 迷ったら長さを足す。10文字から12文字にするだけで、目安が2日から15年になった。記号を足すかどうかで悩むより早い。
- 紙で配るなら「紛らわしい文字を使わない」は入れたまま。16文字・記号ありで比べると、外したときの76種類・100ビットが、入れると70種類・98ビットになるだけ。読み間違いの問い合わせのほうが高くつく。
- 登録先が記号を受け付けるかを先に確かめる。「記号は使えません」と出るシステムなら、記号のチェックを外して、そのぶん長さを足す。
- コピーする前に閉じない。ページを開き直すと一覧は空になり、同じものは二度と出てこない。
- 誰のぶんかは自分で管理する。一覧はパスワードが並ぶだけ。名前と組にする作業は、貼り付けた先で行う。
- 次も同じ条件で作るなら、名前を付けて保存する。呼び出しただけでは残らず、開き直すと16文字の初期設定に戻っている。
- 配ったら変えてもらうまでが一続き。初期パスワードは短くしたぶん弱い。ツール自身が「2日」と出している。

